
立体駐車場などの急な下り坂。「Dレンジだとスピードが出すぎるから」とシフトを「1(ロー)」に入れたのに、エンジンブレーキが全く効かず、車がどんどん加速していく……。
こんな恐怖体験をしたことはありませんか?
特にサンバーなどの3AT車において、この現象は単なる「仕様」で済ませてはいけない危険な故障のサインかもしれません。
下り坂でエンジンブレーキが効かないと、フットブレーキに頼り切りになります。最悪の場合、ブレーキが過熱して効かなくなる「フェード現象」や「ベーパーロック現象」を引き起こし、重大な事故につながる恐れがあります。
1. Dレンジと1レンジの違い(仕様か故障か)
まず、サンバーの3ATにおける「正常な挙動」と「異常な挙動」を整理しましょう。
Dレンジでエンブレが効かない:正常(仕様)
Dレンジの1速は、自転車のペダルのような「ワンウェイクラッチ」という仕組みで動力が伝わっています。加速方向には繋がりますが、減速方向(タイヤからエンジンへのバックトルク)には空転する構造になっています。
そのため、Dレンジのまま下り坂でアクセルを離しても、スルスルと空走してしまうのは故障ではありません。
1(L)レンジで効かない:異常(故障)
シフトを「1」に入れると、内部で「ロー&リバースブレーキ」という強力なブレーキバンドが作動し、ワンウェイクラッチの空転を強制的にロックします。
これにより、タイヤの回転を無理やりエンジンに伝え、強いエンジンブレーキを生み出します。
つまり、「1に入れても加速していく」=「強制ロックする機能が死んでいる」という明確な異常事態です。
2. 「バックはできる」が運命の分かれ道
もしこの症状が出た場合、すぐに確認してほしいのが「バック(R)は力強く動くか?」という点です。
実は、1速エンブレで使うブレーキと、バック(R)で使うブレーキは同じ部品(ロー&リバースブレーキ)です。
| 症状 | 想定される原因 |
|---|---|
| 1速エンブレ× バック(R)× |
【重症】 内部のブレーキ摩擦材が摩耗して終わっています。 ミッション載せ替えコースです。 |
| 1速エンブレ× バック(R)○ |
【軽症の可能性大】 摩擦材は生きています。 指令(シフト操作や油圧)がうまく届いていないだけです。 |
もし「バックは元気に動く」のであれば、まだ諦める必要はありません。
3. 疑うべき2つの原因と対策
バックが正常な場合、以下の2つが原因として濃厚です。
① シフトリンク(ワイヤー)のズレ【本命】
運転席で「1」に入れても、ミッション側が「2」と「1」の中間で止まっているパターンです。
- なぜ起きる?:シフトワイヤーの伸びや、リンク部分のブッシュ(ゴム)が砕けてガタが出ているため。
- なぜバックは平気?:Rレンジはシフトパターンの端っこにあるため、多少ガタがあっても勢いで入りやすいためです。
- 対策:車の下に潜り、シフトリンクのガタを確認・調整します。これで劇的に直ることがあります。
② 内部シールの油圧漏れ
ピストンを押すゴムシールが劣化し、油圧が少し逃げているパターンです。
- 症状:油圧が高い「R」では押し切れるが、油圧が並の「1」では押しきれず滑ってしまう。
- 対策:ワコーズの「ミッションパワーシールド」など、シール復元効果のある添加剤を試す価値があります。
まとめ
立体駐車場でエンブレが効かないと焦りますが、「バックが正常かどうか」で対応が大きく変わります。
まずは安全な場所でバックの挙動を確認し、問題なければ「シフトリンクの調整」から疑ってみてください。ミッション交換という最悪の事態を回避できるかもしれません。



コメント